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夢幻の闇(中編) [物語(徳川家康)]

注意

※最初に、「注意事項」をお読みください。
※この物語は、作者の妄想100%でできております。
※この物語は、グロ表現があります。
※三成くんの設定が、公式ではあまり公表されていないため、史実を中心に組んであります。
※出演しているキャラの性格が、公式やあなたの中のイメージと違う場合があります。



……以上をよくご確認のうえ、納得できた方のみ、下記のリンクをお開きください。 
 
銃声が響くのと同時に、秀吉が信長を抱えて地面に伏せ、茶猫が三成を突き倒したため、弾は誰にも当たることなく飛んで行った。

「…信長様、お怪我は?!」
「大丈夫だ。それより…」
「…! 三成…?!」

 二人が茂みの方に目をやると、茶猫を振り払う三成の姿があった。彼は、秀吉の声に驚いたように目を見張ると、慌てて駆けて行った。信長は、その後を追うように人影が動いたのを確認し、三成を追いかけようとする秀吉を制した。

「…っ! いったぁ…。 あ、三成くん!」
「三成! 待て!!」
「秀吉! 追わんでよい。すでに追っ手をつけてある。じきに、三成を『操っている者』もあぶりだせる。城に戻り、全員に酉の刻に集合するように伝えろ。いいな」
「御意!」

 片膝をつき、信長に頭を下げた後、即座に動く秀吉。彼が立ち去ると、ゆっくりと茶猫の方に歩み寄り、手を差し伸べた。

「怪我は無いか? 茶猫」
「信長様、大丈夫です。…でも、三成くん、なんで…」
「あやつの意思ではない。今、そいつをあぶりだしているところだ。すぐにわかる。戻るぞ、いいな」
「はい」

 茶猫は小さく頷いて、信長の手を借りて立ち上がり、彼の馬に乗って城へと戻った…。

             ◇◇◇

 幻龍斎の隠れ家に、三成の悲痛な叫び声が響く。両脇を黒ずくめの男達に押さえ込まれ、彼の心臓は、幻龍斎の手の中で、今にも握り潰されようとしている。

「お…お許しください…! 幻龍斎様…!」
「三成よ…、儂が咎めておるのは、信長を始末し損ねたことではない。そのあとじゃ…。なぜ、勝手に命を断とうとしたんじゃ? ん? お前の命は、ほれ、儂の手の内にあるんじゃぞ?」
「…うぐ…、あぅ…」
「分かるか? お前の心の臓など、一捻りで潰せるんじゃ…。もう、勝手に死のうとなど、するでないぞ? 分かったか?」
「…は…い…、…幻龍斎…様…」
「分かればよい…。そろそろ、切れるころじゃろう…。ほれ、これを飲め…」

 ぐったりしている三成の口に、竹筒を押し当てて中の液体を飲ませると、男達が離れて彼を床に転がした。同時に、別な男が音もなく幻龍斎に近づき、片膝をついて頭を下げると同時に報告する。

「幻龍斎様、たった今、忍びが一匹逃げていきました。おそらく、信長が放った斥候ではないかと…。いかがいたしますか?」
「よい、ほおっておけ…。むしろ、好都合じゃ。三成をエサに、奴等を引きずり出して皆殺しにし、儂が天下を牛耳る絶好の機会になろう…。そうなれば、家康も必要なくなるな。三成、本当にお前は役に立つのう…」

 床に横たわり、浅く荒い息をして震えている彼の髪を梳きながら、幻龍斎は下賤な高笑いを上げるのだった……。

             ◇◇◇

 時を少し戻す。信長の命を受けた秀吉の使者が、家康のところにやってきた。

「家康様、信長様からの早急の知らせです。『酉の刻に、緊急の軍議を行う』とのことです」
「軍議? 一体、何事だ」
「はい、なんでも、三成様が信長様を暗殺しようとしたとかで…」
「…三成が?! 何の冗談だ?」
「分かりませんが、ただ、そう伺っております…」
「分かった、もう、下がっていい」
「は! 失礼いたします」

 使者は、頭を下げるとその場から立ち去った。家康は、頭の中のもやが少しずつ晴れるのを感じながら、考え込む。

(三成が…なんで……?…!)
「…佐良…幻龍斎…?」

 もやが晴れて、出てきた名前を思わずつぶやく。それが何を意味しているのか、その時はまだ、分からずにいた…。

              ◇◇◇

 申の刻の安土城に、三成以外の武将と茶猫が集まっていた。まだ、信長は来ていないようだ。が、その場にいる全員が、深刻な顔をしている。重い空気を払うように、光秀が口を開いた。

「秀吉、三成が信長様を暗殺しようとした、それは事実か?」
「あぁ、間違いない。俺は、銃を持ってるあいつを見たし、茶猫はあいつを張り倒して止めていたからな」
「…うん、茂みに隠れるから、どうしたんだろうって思って…それで見に行ったら、三成くんが銃を構えていて…信長様を狙っていて…あとはもう、無我夢中で…」
「そうか…。しかし、まともに銃を扱えないあいつが、銃で信長様を殺そうとはな…」
「笑い事じゃねぇだろう、光秀。もし、成功していたらどうなったか、分からないんだぞ!」
「政宗、俺達だってまだ半信半疑だ。信長様は、三成の意思じゃない…あいつを操っている奴がいる、と仰っていたし…」
「秀吉さん、操っている奴って…、佐良幻龍斎っていう奴、ですか?」

 家康がその名を口にすると、秀吉と光秀の表情が変わった。光秀が、少し強張った表情で家康に問いかける。

「……何故、お前がその名を知っている?」
「一週間程前、俺の目の前で三成がそいつにさらわれたんです…。なんで、今まで思い出せなかったのか…分からないけど…」
「家康、奴の目を見なかったか?」
「目…? いえ、お面みたいのをかぶっていたから、目は…」
「お面越しでも、力を発揮できるとはな…。厄介だな…」
「一体、何だって…!」

 家康の言葉が終わる前に、信長が悠然と部屋に入り、上座に座る。ゆっくりと集まった武将達を見回してから、口を開いた。

「待たせたな、皆のもの。それに、佐助」
「佐助?」

 不意に出た名前に驚き、全員がその名を呟くと同時に天井の板が外れ、佐助がひらりと降りてきて、礼儀正しく正座して頭を下げると、報告を始める。

「さっきまで、上で話を聞いていました。三成さんは確かに、佐良幻龍斎の幻術にかかり、操られています。アジトも確認できました。…追いかけてる途中で、三成さんが橋から身を投げようとしていた時は、正直焦りました…。まぁ、俺が止める前にあっちの方が連れ去って行ったので、死なせずに済みましたが」
「よくやったな。で、奴等の様子はどうだ?」
「集まっている数は、ざっと十名ほど。そこに、幻龍斎と三成さん、という感じです」
「そうか」

 佐助が話し終えると、秀吉が彼に尋問を始める。

「佐助、謙信の懐刀であるお前が、なんでここにいるんだ?」
「信玄様からの命で、三成さんを監視するように言われたんです。幻龍斎が信玄様を訪ねてきて、三成さんのことをしつこく聞き出そうとしていたから、心配になったみたいで…。その際、動きやすくなるように、信長様宛に信書も預かってきましたし」
「信書?」
「はい。内容は知りません。見るわけいきませんから」
「…信書の内容だが、『近江の悪魔』が安土に潜伏した。三成のことが心配だから、佐助を貸し出す。用心しろ、と書いてあった。休戦中とはいえ、他の奴に俺の首をかすめ取られるのが、相当悔しいと見えるな」

 佐助の言葉を補佐するように信長が言うと、秀吉と光秀が顔を合わせる。それをみた政宗が、二人に疑問をぶつける。

「二人とも、何か知ってるんだったら、全て話せ」
「………近江の悪魔、こと、佐良幻龍斎は、三成がまだ寺に預けられていたころからあいつを狙っていた、姑息な男だ。厄介なのは、『邪眼』という不思議な力を持った目を使い、人の心を自在に操る。三成も、それにやられているんだろう」
「邪眼? なんだそりゃ」
「俺達にも、よくわからん。ただ、三成がいた寺の住職達の話では、奴が何か、良からぬことを目論んでいて、それに佐吉、あ、三成の幼名だが、あいつを使おうとしている、と。だから、気をつけてくれ、ともな」
「くそ、なんで今頃になって…」
「期が、熟したから、だと思いますよ」

 秀吉の呟きに、佐助が答える。さらに淡々と言葉を続ける。

「幻龍斎は、信長様を殺して天下をとる計画を立てています。ここに、あいつが書いていた計画書みたいなものがあるんですが、三成さんは暗殺までの駒で、その先は、家康さん、あなたがターゲットになっていました」
「たーげっと?」
「はい。簡単な話、信長様を殺した犯人である三成さんを、家康さんが捕まえるか殺すかすれば、他の皆様も、次の天下人は家康さん、と納得せざるえない。その家康さんを陰から操れば、自分が天下を取ったのも同じことになります」
「……!!」
「そのために、幻龍斎はあなたが自分の幻術にかかりやすいかどうか、事前に試しているはず。心当たり、ありませんか? 三成さんがさらわれるより前に、ですが…」
「心当たり…」

 佐助の言葉を受け、家康が記憶を手繰る。ふと、悪夢を見始めた日のことが思い出される。

「そう言えば、悪夢を見るようになった最初の日、ケイと一緒に三成を探しに行ったんだ…」
「悪夢? あ、例の三成の生首が出てくる奴、か」
「そうです、政宗さん…。三成を見つけた時、一緒にいた奴をあいつ、ひどく嫌っているみたいだった。…あの時、一緒にいた奴が、幻龍歳だったのかも…」
「…家康、それは十日程前のことであっているか?」
「あ、はい、光秀さん、そうです…」
「だとすれば、…ケイの言葉をもう少しきちんと受け止め、対応すべきだった。俺としたことが、迂闊だった…」
「どういうことだ? 光秀」
「…あぁ、すまん秀吉。ケイが九州に発つ日、俺にこう言ったんだ。『三成に気持ち悪い奴がつきまとっているから、気をつけてくれ』と。あの子には、そいつの名前がわからなかったみたいでな」
「気持ち悪い奴…」
「確かに、奴を見た時のケイ、毛を膨れ上がらせて威嚇してました…。そいつと別れて、三成が抱いて御殿に戻っても膨れたままで…」
「…なるほど。家康、お前はその時に、奴の邪眼で悪夢を見るように術をかけられていたんだな…。だから、二度目に会った時は、お前に正体がばれないように、顔を隠していた、という訳だ」
「そうだったのか…。くそ! 腹が立つ…」
「光秀さん、確認したいのですが…。九州に出かける時のケイに、変わった様子とかありませんでしたか?」
「ん? 全くなかったな。どういう意味だ? 佐助」
「いえ、ケイも一緒に邪眼にかかっていたはずですよね…。だとすれば…、幻龍斎の邪眼は、人以外には通用しないのかもしれませんね…。ランマル、ちょっと来て」
「はいニャ、佐助先輩」

 佐助に呼ばれ、天井からひらり、と一匹の猫が舞い降りてきた。ランマル、と呼ばれた猫は、武将達に軽く頭を下げた。

「お初にお目にかかりますニャ。私は、佐助先輩に仕えるアイルーで、ランマルと申しますニャ。ケイ殿とは、大変親しくさせていただいておりますニャ。今回は、三成様の一大事、と伺い、佐助先輩と供に参りましたニャ。よろしくお願いしますニャ」
「それは、ご丁寧に…。ま、いつからケイと付き合っているのか、今は聞かないが、よろしくな」
「はいですニャ、秀吉様。で、佐助先輩、用件は何ですニャ? 話は、天井裏ですべて聞いていましたが…」
「うん、今回の敵は妖術を使えるみたいだ。でも、お前達に効果はないらしくて。だから、ケイの代わりに来て欲しいんだ。いいね?」
「分かりましたニャ。皆様、よろしくお願いしますニャ。あ、念のために現状を、謙信様達に矢文で知らせておきましたニャ」
「ありがとう、ランマル。サポートが早くて助かるよ」

 佐助が褒めると、うれしそうに微笑むランマル。一段落すると、信長が口を開いた。

「状況は分かったな。ここにいるものだけで、夜明けと同時に三成の奪還に向かう。皆の者、支度をしておけ。…それと、秀吉」
「…は、何でしょうか?」
「三成の処分、貴様に任せる。二度と勝手に動き回らぬよう、きつく灸を据えてやれ」
「は! かしこまりました!」
「佐助、貴様は秀吉とともにいろ。いいな」
「御意。ランマル、君もね」
「はいですニャ! 秀吉様、よろしくお願いしますニャ」
「おう、よろしくな」

 ランマルが頭を下げると、一同は自室に戻って行った…。

                       ◇◇◇

 茶猫が、部屋で落ち着いていると、ランマルがやってきて、秀吉の部屋に来てほしい、という。慌てて身なりを整えて向かうと、二人が神妙な顔をして待っていた。

「悪いな、茶猫。休もうとしていたのに呼び立てて…」
「大丈夫です、秀吉さん。何かあったの?」
「あぁ、ちょっと、作戦会議…。ほかの連中には、まだ話せないことなんだ…」
「話せない、こと?」
「ここからは、俺から話すね。三成さんが、自分から命を絶とうとしたことは、話したよね?」
「うん、さっき、佐助くんが言っていたよね。橋から飛び降りようとしたって」
「そう。その時のことなんだけど…。三成さん、秀吉さんの声でほんの少しだけかもしれないけど、術が解けたんじゃないかなって」
「本当に?! 本当に、そんなことが…?」
「まだ、確証を得たわけじゃないから、他の奴等に言えないんだ…」
「秀吉さん…」
「そこでね、茶猫さん。君に、頼みがあるんだ」
「私に? うん、できることがあるなら、言って。私も、三成君を助けたいの」
「ありがとう。幻龍斎は、とても用心深い奴だから、自分が追いつめられるか、または、有利に立てるまでは表に出てこないと思う。そこで、邪魔な猛者達を捕まえて三成さん一人になったら、俺が合図をするから、彼の前にわざと飛び出して、人質になって欲しいんだ」
「わざと人質に?!」
「うん、もしも、幻龍斎に幻術を上掛けされたら、解くのが難しくなる。最悪、解くことができなくなることもあり得るんだ。それを避けるために、確実に二人を引き離しておくためにも、人質になって欲しいんだ。もちろん、茶猫さんの命は俺達が必ず守る。君が捕まったら、ランマルが足元に小さなたる型の煙玉を置くから、それを蹴飛ばして。煙幕に紛れて、俺達が必ず助けるから」
「……分かった。三人を信じているから。必ず、三成くんを助けようね」

 ぎゅっと、二人の手を握り締めて話す茶猫に、硬かった三人の表情が和らいだ。


                       ◇◇◇

 時を同じくして、春日山城。一本の矢文が広間に刺さった。幸村がそれを取って、信玄に手渡した。

「ランちゃんからか。……遅かったみたいだな…」
「信玄様、遅かった…とは?」
「幸、佐吉が…いや、三成が幻龍斎の手に落ちたそうだ。明朝、夜明けとともに奪還に向かう、と、書いてある」
「…まじかよ…。くそ、俺が近くにいれば…」
「誰がいても、同じだったと思うよ。今は、佐助達を信じて、次の連絡を待つとしよう」

 苦々しい顔で頷く幸村を優しく宥める信玄。黙って酒を飲んでいた謙信が、不意に口を開いた。

「信玄、お前、敵の将だというのに随分と奴を気にしているみたいだが、どういう了見だ?」
「ん? …謙信には、話したことがなかったな。俺は若いころ、近江まで来たことがあったんだ。信長を攻めるには、そこを抑えておかなければならなかったからな。下見するつもりで行ったが、崖から落ちて大怪我を負ってな。彼がいた寺に担ぎ込まれ、養生していたんだ」
「ほう…。それだけの縁、か」
「あぁ。彼が、小僧としてもぐりこんだ幸と、俺の身の回りの世話をしてくれてな」
「…佐吉が、幻龍斎の手下にさらわれそうになった時、治りかけの体で救出に行って悪化させて、完治するのが長引いたんですよね…」
「そんなこともあったな、幸。よく覚えているなぁ~」

 幸村に言われ、へらっと笑って返す信玄。下らん、といった顔で酒をあおる謙信に、さらに話を続ける。

「その時に、彼の才能に目を付けていたんだが、そこの住職達が頑固でなぁ…。『元服するまでは…』って言って、なかなか俺にくれなかったんだ。仕方なく、時機を見ていたら、秀吉に持っていかれた、と…、そういう訳だ」
「…なら、秀吉の奴を殺して奪い返せばよいだけだろう?」
「いやいやいや…、佐吉が、いや、三成が自分で選んだ将だ。敵対してしまったのは悲しいが、これも運命と受け入れているよ」
「……下らん」

 ふん、と鼻で笑い、酒をあおる謙信に、寂しそうに微笑んで返す信玄であった…。

                 ◇◇◇

 ………そして、波乱の夜が明ける………。

(続く)
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