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時空を超えた猫  第二章 出会い~三成編~ [物語(ネタバレなし)]

※初めに、注意事項をお読みください。

※この物語は、すべて作者の妄想100%でできております。

※この物語は、公式の物語と一切関係ありません。

※グロシーンはないと思いますが、心配な方は閲覧をご遠慮ください。

※キャラの性格が、公式のイケメン戦国やあなたの妄想と違う場合があります。そういうのは受け付けないわ!という方は、このまま、回れ右をしてお帰りいただき、このブログのことを一切お忘れいただきますよう、お願いします。

以上のことがお守りいただける方のみ、この先にお進みください…。 
 
 …時は、天生六年三月十七日。酉の刻を回り、戌の刻に差し掛かるあたりの安土の城下を、石田三成は小さな提灯を片手に持ち、自身の御殿へと向かっていた。この日は、自分の大切な君主の誕生日。盛大な宴が行われ、幾分酔いも回っていた。

(今年も無事に、秀吉様の誕生日をお祝いできた…。来年も、お祝いできるといいな…)

 心地よい風に当たりながらゆっくりと角を曲がると、物陰から手ぬぐいのようなもので顔を隠した二人の浪人が、刀を構えて飛び出して来た。三成は、提灯の火を消して投げると、刀を抜いた。浪人の一人が、彼の顔を確認しながら言った。

「……石田三成、だな。お前に恨みはないが、あるお方がどうしてもお前の首が欲しいと言うんでな。覚悟しろ!」
「いかな理由があろうとも、我が命は秀吉様のもの。貴様等にどうぞと差し出せるものではない」
「うるせぇー! やっちまえ!!」

 言うが早いか、二人の刀が三成を襲う。なんとか弾き返し、一歩後退して体制を整え、相手に切りかかる。二人の動きに翻弄されながらも、必死に応戦する三成の背後から、三人目の浪人が切りかかった。激痛に耐えきれず、膝から崩れ落ちる三成を見下ろしながら、低い声で浪人が言った。

(……まさか、もう一人潜んでいたとは…)
「ははは! 油断したな。……覚悟ぉ!」
「…!!」
「………みぃーにゃぁああああああああああああ!!」

 振り上げられた刀から目を背けると同時に、悲鳴とともに『何か』が空から降ってきた。起きた出来事が理解できず、固まる四人。落ちてきた『何か』は、ピクリとも動かない。

(……猫…か? 猫、なのか? 鳴き声は、猫のようだが…)
(猫が、降って来たのか?)
(面妖な姿をしているようだが…)
(一体、どこから…?)

 四人が凝視していると、突然、猫(?)が動き、頭を軽く振り、三成と目が合った。しばらく見つめあうと急に猫(?)が立ち上がり、刀のようなものを構え、叫んだ。

「…ミヤビ、怪我をしているにゃら、下がっててニャ! こいつらは、僕が片付けるニャ!」
(…! 立った! 喋った! 化け猫だ!!)
「…ばばばばばばば、化け猫! 覚悟ぉー!」

 恐怖にかられた浪人が、猫(?)に切りかかる。が、刀は相手の体を傷つけることなく、あっけなく折れてしまった。

「貧弱な爪ニャ…。初めて見るニャ、新種のモンスターニャ? ま、いいニャ。あとで調べれば…」
「なにをわけわからないこと言ってるんだぁ? …!」

 狼狽えている浪人達の目の前で、猫の武器が空を切り、刀が折られて刃先が地面に落ちる。猫は、なおも武器を振り上げ、浪人達に切りかかる。彼等は、刀を放り出して散り散りに逃げ出した。

「…うわぁぁぁぁ…! に、逃げろぉ……!」
「待てニャ!……あ、そうニャ! ミヤビ! 怪我…は…………」
(……何を言っているの? ミヤビはもう、死んだじゃない…。もう、この世にいないのに…)

 振り返る猫の金色の瞳が、悲しげに揺らぐ。何かを思い出したのか、じっと考えているようだ。軽く頭を振ると、大きく息をついて、三成の傷の手当てを始めた。処置が終わると、彼に向き直して頭を下げた。

「ごめんなさいニャ、人違いでしたニャ。これ、回復薬グレートですニャ。回復の足しになるから、飲んでくださいニャ。あ、その絆創膏は、今夜一杯はがさないでくださいニャ。傷口、くっつけながら止血してますニャ。血が止まるまで、時間かかりますから、気を付けてくださいニャ」
「あ、ありがとうございます…。…青汁、かな? …あ、甘い…。………あ、私は、石田三成と申します。君は?」
「あ、すみませんニャ! 僕は、ケイと申しますニャ。三成さん、この村のギルドは、どこにありますニャ?」
「ぎるど…って、何でしょうか?」
「……?……??……!!……この村にゃ、ギルドがニャいの?! 僕は、どこで仕事をもらえばいいニャ!!」

 キョトンとする三成に、悲鳴を上げるケイ。狼狽する彼女に優しく話しかける。

「あの、ケイさん。行くところがないのなら、私の御殿に来ませんか? 助けていただいたお礼もしたいですから…」
「ごてん、て、三成さんのおうち、ですかニャ?」
「そうです。貴女さえ、よければ…ですが…」
「この村のこと、よくわからないから、よろしくお願いしますニャ」

 ぺこん、と頭を下げるケイに、自分の上着をかけて優しく抱き上げると、三成は家路を急いだ…。

                  ◇◇◇

 秀吉は、妙な胸騒ぎを覚えて三成の後を追った。彼が本丸御殿を出たのが半刻ほど前。頭をかすめるこの予感が、勘違いであることを祈りながら辿って行った。

 やがて、例の現場に差し掛かった。地面に残る血痕と、折れた刀を見つけ、自分の不安が的中したことを察した。辺りを見渡すも、彼の姿はない。傷を負った状態で連れ去られたのか、それとも、敵に怪我を負わせて無事に逃げ切ったのか、判断がつかない…。

「…三成!」

 苛立ちを押さえながら、秀吉は彼の御殿へと向かった…。

                 ◇◇◇

 息を切らして御殿に来た秀吉に、驚いた門番が話しかけた。

「秀吉様、どうかしたのですか?」
「三成、戻ったか?」
「三成様なら、四半刻前にお戻りになりました。血の匂いがしたので伺いましたら、『怪我をした猫を拾った』と仰られて、早々に中に入られましたが…」
「そうか…。邪魔して悪かったな」

 ふわっと微笑んで、門番の肩を軽く叩くと、足早に中へ入って行った…。

                 ◇◇◇

 途中で会った女中に話を聞いて、三成の寝室に向かった。近くまで来ると、話し声が聞こえる。癖のある喋り方をする少女と一緒にいるようだ。

(三成の奴…。怪我を口実に少女を連れ込むとは…)

 女心を学んで欲しい、と日頃から言っているが、まさか、年端もいかない少女に手を出そうとするとは…。軽く注意しようと、襖に手をかけ、中に入った。

「三成! おま…!」
「あ、ケイさん! その方は…!!」
「…誰ニャ! 三成さんの敵ニャ?!」

 踏み込んだ秀吉の首に、鞘に納まった状態の刀が突き付けられる。三成が慌ててケイを宥めつつ、説明を始めた。

「ケイさん、落ち着いてください…。その方は、私がお仕えしている方で、味方です」
「…味方、ですニャ? お仕えしている、というのは、どういう意味ですニャ?」
「そうですね…。ケイさんの言うところの、『旦那さん』、でしょうか…」
「…!! そうだったんですニャ! そうとは知らずに、ごめんなさいですニャ!」
「いや、…分かってくれれば、それでいい…。で、三成。この子…もとい、猫、か? 一体、何者なんだ?」

 刀を下ろし、土下座するケイ。秀吉が腰を下ろして、彼女の背中をポンポンとあやすように撫でつつ、三成に尋ねる。彼は、それまでの経緯を、筋道立てて話し始めた。

「彼女は、私の命の恩人です。浪人に襲われ、危ういところを助けてもらったのです。話を聞いてみると、安土に来たばかりで行くところがない、というので、ここに連れてきました」
「…やっぱり、あの血痕はお前か。で、傷の具合はどうなんだ?」
「大したことは………!」
「左肩から右の腰のあたりまで、斜めにざっくり切られていますニャ。今、止血していますから、明日、お医者様にみてもらってくださいニャ」
「…ありがとな。三成、彼女の言う通り、明日は休んで医者にみてもらえ」
「いえ、大事な軍議を欠席する訳にはまいりません。それが終わり次第、医者に行きます」
「お前な……。……分かった。無理はするな、体調が悪くなったら、すぐに言え。いいな」
「はい…」

 頑固な三成に、盛大にため息を吐く秀吉。落ち着いたところで、ケイの方を見た。

「俺の名は、豊臣秀吉。君は?」
「ケイ、と申しますニャ。よろしくお願いしますニャ」
「ケイ、だな、うん、よろしく。…ところで、その面妖な鎧、そろそろ脱いでも大丈夫だぞ? ここなら、三成の命を狙う不届きな輩は来ないからな」
「そうですかニャ。……じゃ、お言葉に甘えて、脱ぎますニャ」

 そういうと、ケイは着ていた鎧を脱いで、近くの棚に置いた。その背中を見て、秀吉が呟く。

「背中、カタバミの葉みたいな模様があるんだな」
「カタバミ?」
「あぁ、小さな葉っぱだけど、すごく可愛い形をしているんだ」
「そうなんですニャ。僕がいた世界では、『ハート』って言って、心とか心臓とか、そう言った印でしたニャ」
「…? 『僕がいた世界』?」
「そうですニャ。さっきまで、三成さんにも話していたのですが、どうやら僕は、『ワープ・ホール』という、次元空間を歪める力によって、ここに来たみたいですニャ」
「わーぷほーる? それは一体、何なんだ?」
「僕も、よくは分からないのですニャ。ただ、それを使って旅をしている人がいて、あ、僕はその人のことを『旅人さん』って呼んでいますニャ。その人の話ですと、全く違う二つの世界をつなぐ、不思議な力を持った道のようなもの、なんだそうですニャ」
「……確かに、この日ノ本には、ケイのような生き物は存在していないからな…。そう考えると、納得できる…」

 難しい顔をしながら、無理やり納得する秀吉の隣で、三成が口を開いた。

「あの、ケイさん。一つ聞いても、いいでしょうか?」
「なんですニャ? 三成さん」
「ミヤビさんとは、どういう方でしょうか?」
「ミヤビ?」
「はい。私をその方と間違えていたので…。もし、一緒にここに来たとしたら、今頃、ケイさんと同じように困っているのではと思いまして…」
「確かに…。なら、一刻も早く見つけないと…」
「…その必要、ないですニャ。ミヤビは、……二ヶ月前に、モンスターに食べられて、死んじゃいましたニャ…」

 悲しそうに瞳を伏せながら、ケイが呟くように言うと、二人は不味いことを聞いた、という顔をする。ケイは、持っていたポーチの中から写真立てを出して秀吉に渡すと、話を続けた。

「三成さんがあんまりにもそっくりだから、本気で死んじゃったことも忘れてしまいましたニャ」
「これって、絵か何かか? ……!………そっくりって…。…三成、一つ聞いていいか?」
「なんでしょうか?」
「お前、生き別れになった双子の兄弟とか、いるか?」
「いません。兄と弟はいますが、私とはあまり、似てはいません」
「……お前が、ケイの世界に行っていた、ということは…無いか」
「三成さんがミヤビなら、左腕があるのがおかしいですニャ。ミヤビは、左腕だけ残して、モンスターに食べられてしまいましたからニャ…」
「にしたって…、生き写しだ…。見間違うのも無理ないぞ…」

 言いながら、写真立てを三成に渡す。そこには、ケイと一緒に、自分に生き写しの青年が写っていた。銀灰色の髪、紫色の瞳に泣き黒子の位置まで同じで、まるで、自分がそこにいるような気さえしてくる。

「…まさか、ここまでそっくりだとは思いませんでした…」
「声も、おんなじですニャ。本当に、ミヤビがいるのかと思うくらいですニャ」
「たとえ勘違いからでも、君が助けてくれなかったら、三成は死んでいた…。俺からも礼を言う、本当にありがとう」
「いいえ…。僕の方こそ、この世界で頼れる人がいないので、本当に助かりますニャ。よろしくお願いしますニャ」

 ぺこん、と頭を下げるケイを、微笑ましく見つめる二人。ふと、秀吉が何かを思い出したように口を開いた。

「ところでケイ、変なことを聞くけど、君の誕生日はいつだ?」
「誕生日、ですニャ?」
「あぁ、今はちょっとごたついているから無理だが…、いずれ、俺達がお仕えしている方や、他の仲間も紹介する。ただ、そいつらは何かと祝うことが好きでな。特に、生まれた記念日は大事にするんだ。よかったら、教えてくれないか?」
「…僕は、いつ生まれたのかわからないのですニャ。生まれて間もなく、僕の家族はリオレウス、あ、大きな鳥みたいなモンスターですけど、それに食べられてしまって…。ミヤビといた時も、そういうの、気にしたことなかったですニャ…」
「そっか…。じゃ、これも何かの縁だしな。出会ったこの日を、君の誕生日にしよう。それでいいか?」
「…今日が、僕の誕生日…ですニャ?」
「あぁ、来年は、盛大に祝ってやるからな。楽しみにしていろよ」
「はいですニャ! 秀吉さん」

 彼女の頭を優しく撫でながら、嬉しそうに微笑む秀吉。それから、三成にきちんと休むように伝えて、自分の御殿へと戻って行った。

   (第三章に続く)


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