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武将戦隊 イケメンジャー プロローグ⑴ [茶猫編] [(妄想)イケメンジャー]

※初めに、注意事項をお読みください。

※この物語は、すべて作者の妄想でできております。

※この物語は、公式の物語と一切関係ありません。
※公式のイケメンジャーが物足りない猫が、妄想していたイケメンジャーを書き起こしたものなので、公式のイケメンジャーとは全く関係ありません。

※キャラの性格及び性別が、公式のイケメン戦国やあなたの妄想と違う場合があります。そういうのは受け付けないわ!という方は、このまま、回れ右をしてお帰りいただき、このブログのことを一切お忘れいただきますよう、お願いします。

以上のことがお守りいただける方のみ、この先にお進みください…。 
 
 (ど、ど、ど、ど、どうしようーーーー!!)

 私、桜井茶猫は、難題に直面していた。事の起こりは、一月前にさかのぼる。勤めていた会社を辞め、憧れだったデザイナーになるために小さなデザイン事務所に転職が決まったあの日、大家さんに言われた、衝撃的な通告…。

「桜井さん、大変言いにくいのだけど……」
「なんでしょうか?」
「……来月一杯で、このアパートをたたむことにしたんですよ…」
「それって……でていけ、ってことですか?」
「本当に申し訳ない! 実は、栃木で暮らしている息子夫婦が、あっちで家を建てたんですよ…。それで私に、一緒に暮らそうと言ってきて…迷ったのですが…」
「息子さんが! 良かったじゃないですか! 仲があまりよくないって言ってたから…」
「えぇ…。これを機に、息子夫婦ともうまくやっていこうと思ってね…。本当に、申し訳ない…」
「分かりました…。向こうに行っても、元気でいてくださいね」

 ぺこぺこと頭を下げる大家に怒りをぶつけることもできず、複雑な気持ちを抱えたまま、働きながら新しい住まいを探して不動産屋巡りをするも、なかなかいい物件が見つからない。
 苛立ち紛れに辺りを見回すと、喫茶店の看板が目に入ってきた。

「喫茶……FOREST?」

 よく見れば、新しい職場であるデザイン事務所から、さほど離れていない大きなマンションの一階にある、ちょっとおしゃれなお店。自分が気付かないだけで、こんなお店があったんだ…。歩き疲れたし、ちょっと一休みしよう…、そう思って扉を開けて、中に入った…。

「いらっしゃい、お嬢さん。お一人、かな?」
「あ、は、はい! 一人です!」
「緊張しなくていいよ。さ、こちらにどうぞ」

 長身に甘いマスクのマスターに促され、カウンターに座って店内を見回した。アイボリーで統一された壁、濃いブラウンの床に、壁と同系色のテーブルと椅子。いたるところに置いてある、大小さまざまな観葉植物が、まさに『森』の中にいるみたいな錯覚を起こして、すごっく落ち着く…。きょろきょろしている私に、マスターがメニューを差し出した。

「どうぞ、お嬢さん」
「あ、すみません!…あ、何か、おすすめってありますか?」
「そうだな…。今日は、チーズケーキが上手く焼けたから、ケーキセットがおすすめかな。うちのオリジナルコーヒーで、ね」
「じゃ、それをお願いします」
「了解。少し待っていてね」

 そういって、マスターがコーヒーを淹れるのを見ていた。他のお店と違い、長い口のポットでゆっくりと淹れる方式で、店中にいい香りがあふれて、私の荒んだ心を和ませてくれた。淹れ終わると、綺麗な焼き目のついたチーズケーキとコーヒーが、私の目の前に置かれた。

「どうぞ」
「ありがとうございます…! 美味しい! このコーヒー、私が今まで飲んできた中で、最高に美味しいです!」
「ありがとう。でも…、あいつが淹れたコーヒーには、未だに追いつけないんだ…」

 寂しそうに呟くマスターの視線を追うと、一枚の写真立てが目に入った。そこには、お揃いのマグカップを持った少し若いマスターと、好対照に顔に一文字の傷跡がある、真面目な表情をした男性が写っていた。立ち入ったことを聞いてはいけないような気がしたけど、好奇心に負けた私は口を開いていた。

「マスター、一緒に写ってる方は、どなたですか?」
「彼は、本願寺顕如。俺の従兄弟なんだ。一緒に京都府警で刑事をやっていて一年前に辞めて、二人でここを始めようとしたんだ…」
「一年前……、本願寺……、あ! 思い出した! アヅチカンパニーのイベントでテロがあって、その時に行方不明になった刑事さん…」
「そうなんだ…。あの時、俺は犯人を取り押さえ、あいつは、人質になった副社長を救助に向かい、犯人が仕掛けた爆弾を川に投げ込んで爆発に巻き込まれ、そのまま…」
「そうだったんですね…」
「まぁ、他の奴等がどう思っているか知らないが、俺は、あいつが生きているって信じている。殺したって死なない奴だっていうのは、生まれた時からずっと一緒だった俺が、一番よく知っている。あいつが戻るまで、ここを守るのが俺の役目なんだ」
「……私も、きっと生きていると思います。きっと、出てこられない何か、事情があるのかも…」
「ありがとう、お嬢さん」

 うわ…、こんなに素敵な笑顔もできるんだ…。思わず見とれていたら、急にマスターが真面目な顔をして私に言った。

「ところでお嬢さん、何をそんなに悩んでいるんだい?」
「え?! な、なんでですか?」
「君のように可愛らしいお嬢さんが、そんな深刻な顔をしているなんて似合わないよ。俺でよければ、相談に乗るよ」
「そんな…初対面、なのに…」
「初対面の方が、話しやすいこともあるだろう?」

 そうかもしれない……。抱え込んでいても仕方ないから、話しちゃえ…。優しく微笑んでくれるマスターに促されるように、全てを打ち明けた。

「…大変だったね。そういうことだと、その大家に掛け合って滞在期限を延長させる、などの処置も取れるんだが…」
「それはいいです。私が、もたもたして次の住居が決まらないのが悪いんだし…」
「そうかい?…それじゃ、ここに引っ越すかい?」
「え?」
「あ、俺、この上にあるマンションの管理人もしているんだ。部屋は、すべて南側に大きな窓があって日当たりが良く、間取りは3LDK。家具家電付き。他の住人は、ちょっと癖があるけど信用できる奴ばかりだから、安心してほしい」

 有無を言わさず、ぐいぐい来るなぁ…。でも、それだけ好条件だとすると、家賃も高いんだろうな…。

「…家賃は、要相談、でどうだろう。転職したばかりだと、何かと大変だろうし」
「え? 相談って…。どこの不動産屋さんに行けば…」
「あぁ、不動産屋には登録していないんだ。俺が直接会って、信用できる相手だと判断しなければ、入居は許可しないからね」
「えぇ! それならなおさら…、私、初対面なのに…」
「初対面でも、君は十分信用できる、と判断したんだ。どうだろう?」

 どうだろうって言われても…。でも、退去期限まであと一週間しかないし…。悩んでいると、扉が開いて、若い男女が入ってきた。

「ただいま、おじさん。…あ、いらっしゃい」
「マスター、遅くなりました。いらっしゃいませ」
「幸に三成ちゃん、お帰り。あぁ、この子は新しい入居者になる…あ、名前は?」
「あ、桜井茶猫です…って、え?!」
「茶猫ちゃんだ。あ、彼女はうちのウェイトレスの石田三成ちゃん。こっちが、甥の真田幸村だよ。二人とも、このマンションに住んでいるんだ」

 いつの間にか、入居が決まってるー!! あ、幸村君は目を丸くしてるし、三成さんは天使みたいな微笑みを浮かべてる…。

「おじさん、また、入居者強引に決めたんかよ…」
「困っている人を助けるのは、当然だろう?」
「当然って…。全く…。ま、おじさんが決めることだから、俺は口出さないけどさ…」
「幸のそういうとこ、可愛いよなー」
「か・ら・か・わ・な・い・で・く・だ・さ・い・!」
「…あ、俺は、武田信玄。よろしくな」
「よ、よろしくお願いします…」
「部屋は…三成ちゃんの隣が空いていたね。家賃とかの相談は、後日でいいかな?」
「はい…。よろしくお願いします」

 なんか、いいように言いくるめられてしまった気がする…けど…、ま、いいか。
 すっきりした気持ちで会計を済ませた私は、大きく伸びをして家路へとついた…。

         ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 あれから一週間が過ぎ、家賃の相談や細かいマンションのルールなどの説明を受け、引っ越しの日を迎えた。
 今まで住んでいたアパートにわずかに残っていた荷物を運ぶため、幸村と家康さんが来てくれて、全ての荷物を積み終えると、私は元大家さんに最後の挨拶をした。

「大家さん、今まで本当にお世話になりました」
「いやいや、追い出すような形になってしまって、本当に申し訳ない…」
「そんなこと…。栃木に行っても、お元気で…」
「ありがとう。桜井さんも、元気でな」

 固く握手をしてお別れした後、新居へと向かった。そこには、三成さんと信玄さん、謙信さんがいて、みんなで部屋に運ぶのをてつだってくれた。作業が完了すると、FORESTに皆が集まっていた。

「…家康さん、幸村、ありがとうございました。本当に、助かりました」
「……別に。大したことしてないし」
「家康さんは、謙虚なんですね。あ、引っ越し蕎麦の用意ができてますよ」
「…三成、いちいちうるさい。余計なことは言わなくていい」
「…幸村、家康さんと三成さん、仲悪いの?」
「んー、どっちかっていうと、家康が一方的に三成さんを嫌ってるって感じか。三成さんは、初めて会った時からなんか、すごく尊敬の眼差しで見ていたけど」
「そうなんだ…」

 幸村と茶猫が話している傍らで、家康が心配そうに三成に詰め寄る。

「ところで三成、蕎麦作るのを手伝ったりしてないよね?」
「はい、私がしたことといえば、茹でるためのお湯を沸かしました。それと、盛り付ける器を用意しました」
「…それだけ?」
「はい。お蕎麦を打ったのは、マスターと謙信さんです。あ、謙信さんには、薬味のネギを切ろうとして取り上げられました」
「…当たり前でしょ。超絶不器用なお前が刻んだら、血まみれのモミジネギが出来上がるよ。そんなことになれば、秀吉さんが倒れるから」
「モミジネギ…。それは、美味しいのでしょうか?…あ、でも、秀吉さんが倒れるのは困ります…。あまり、心配をかけたくないので…」
「……もう、いいよ。…惚気聞いてると、砂吐きたくなる…」

 もじもじと照れる三成に盛大にため息を吐く家康。そこに、仕事から帰ってきた秀吉が入ってきた。

「ただいま…って、あ、今日だったな。茶猫ちゃん、春日山マンションにようこそ。引っ越し、手伝えなくてごめんな。……三成、ただいま」
「こんばんわ、秀吉さん。これからよろしくお願いします。…て、あ、気にしないでください! お仕事、大変な時だったんだし…」
「秀吉さん、お帰りなさい。引っ越し蕎麦ができてますよ。早く支度してきてください」
「おう…。三成、怪我とかしてないか? 大丈夫か?」
「大丈夫です。危険なことはしていませんから」
「そうか、なら、いい。それじゃ、ちょっと待っててくれよな」

 軽く三成の頭を撫でて、秀吉は自分の部屋へ向かった。彼を見送ると、三成が茶猫に手を差し出した。

「茶猫さん、今日からお隣同士、仲良くしましょうね。私、同性の入居者が来てくれて、本当にうれしいの」
「私の方こそ、よろしくお願いします! …そういえば、女性の入居者って、三成さんだけですね」
「そうなの。とはいっても、入居して三か月の新参者だから、何とも言えないけど」
「そうなんですか?! もっと長いのかと思ってた…」
「一番長いのは、家康さんと謙信さんよ。あの二人は、ここができてすぐに入居したって、秀吉さんが言っていたわ。そのあと、幸村君が来て、半年ほど前に秀吉さんが入居したって」
「そうなんだ…。あ、秀吉さんが来たみたいですよ。それじゃ、始めましょうか」
「えぇ、主役が座らなきゃ、始められないわよ」

 そう促され、テーブルのそばに向かう茶猫。彼女が離れると、三成は自分の手の中にある、小さなクリスタルを見る。それは、中心にハートの模様が浮かび、ピンク色の輝きを宿していた。そのまま、信玄のもとに歩み寄り、彼にしか聞こえないほどの声で言った。

「……最後の一人、見つけました」
「……そうか、これで、そろったな」
「えぇ…。あとは、『あれ』を探して、条件を満たすだけです」
「…OK。ここからが大変なところだが、彼等ならきっと、大丈夫だ」
「そうですね。マスター、ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」
「乗り掛かった舟だからね。細かいことは気にしないで、大船に乗った気でいてくれよ」
「……はい」

 天使のような笑みを浮かべて、三成は秀吉の方に戻った。そして、茶猫の歓迎会が行われ、にぎやかなパーティーが終わった。喫茶店には、片付けを済ませたマスターと茶猫、それに秀吉と三成が残った。緊張した面持ちでカウンターに座ると、秀吉が小さな箱を取り出し、三成の前に差し出した。

「…三成、聞いてほしいことがあるんだ。あ、マスターと茶猫も、いてほしい。…証人、って訳じゃないが…頼む」
「分かった。茶猫ちゃんも、黙って見ててやってくれないか」
「は、はい!」
「サンキューな。……三成、俺達、出会ってまだ三ヶ月にしかならないけど、ちゃんと、けじめつけようと思う。……俺と、け……」
「…け?…ケーキ? ケーキが食べたいのですか」
「こんな時間に食べたら、体に悪いだろう、って、違う! 俺と、け…け…」
「……け…? 毛糸…? 編み物…ですか?」
「そうだな、大分寒くなってきたしな…でもなくて! 俺と、け…結婚してくれ!」
「結婚…?」
「あぁ、…今すぐ返事してくれ、とは言わない。ただ、これを受け取って欲しい」

 そういって、三成の前に出した箱を開ける。中には、小さいながらもきれいなダイヤが付いた指輪が光っていた。それを彼女の指にはめてそっと抱きしめた後、秀吉は部屋に帰っていった。羨望の眼差しで見つめる茶猫に、少し戸惑った表情の三成が言った。

「…茶猫さん、ごめんなさい…。マスターと二人だけで話したいの…。席を外してもらっても、いい?」
「あ、はい。…じゃ、おやすみなさい」
「お休み、茶猫ちゃん。ゆっくり休むんだよ」
「おやすみなさい、茶猫さん…」

 茶猫が部屋に帰ると、三成は深刻な顔で信玄に話しかける。

「……私、どうすれば…」
「……三成子ちゃん、君は彼が、君の正体を知ったからといって逃げるような、そんな男に見えるのかい?」
「そ、そんなことは…。でも…だましていたのは事実だし…」
「だったらなぜ、彼を信じようとしない? あの企画が出た時、社長である君のお兄さんに直談判するほど、君の身を案じてくれたのに」
「…それとこれとは…」
「…君自身は、どうなんだい? 彼のことを愛していないのかい?」
「私は……彼が好きです。こんな気持ちになったの、初めてだから、よく、わからないけど…」
「なら、自分の気持ちに正直になることも、時には必要じゃないかな? 時にそれが、自分や相手を傷つけることになっても、それを乗り越えた先にしか結べない、大きな絆もあると、俺は思うよ」
「マスター……。そう、ですよね…。やっと、決心がつきました。明日、彼に正直に打ち明けます。それから、兄にもきちんと話します」
「あぁ、頑張るんだよ。微力ながら、俺も手伝うから」

 何かが吹っ切れたように微笑む三成の頭を優しく撫でる信玄。
 彼に頭を下げ、部屋に戻った三成は、パソコンに向かって何かを打ち込んでいた。すると、窓を突き破って、大きな蝙蝠のような羽が生えたモンスターが飛び込んできた。

「――――――――――!きゃ――――!!」

 三成の悲鳴に、六人が彼女の部屋へと向かう。すると、大きなモンスターが彼女を抱えて飛び出そうとしていた。いち早く駆け付けた秀吉が、モンスターに飛び掛かる。

「三成!…てめぇ、三成を放せ!」
「んぎぐぎぃぁぁぁぁぁぁ!!」
「!!!!!」

 声とも悲鳴ともわからない奇声を上げて秀吉達を怯ませると、モンスターはそのまま、三成を抱えて飛んで行った。

「なんなんだ? あれは。信玄、何かわかるか」
「俺に聞かれても、わからん。一体、何が起きたんだ?」
「……あのモンスターが何なのか、それすらわからないんじゃ、どうしようもないでしょう」
「家康さんの言う通りだけど…。なんで、三成さんが襲われたの?」

 不安そうに顔を合わせる五人と対照的に、壁を殴りつけている秀吉。それに気付いた幸村が、そっと声をかける。

「秀吉さん、気持ちはわからなくもねぇが、あれが何なのかわかんねーいま、苛立ってたってしょうがねぇ。まずは、手掛かりを探さねぇと…」
「……そんなこと、わかってる。でも…俺は…自分が許せねぇ…。愛した女一人、守ることができなかった…」
「……なら、助けるために何ができるか、考えればいいだけだろ。…あんた一人じゃねーよ。俺らだって、助けることができなかった悔しさ、抱えてんだからよ」
「幸村…」
「とりあえず、今日んとこは寝て、明日考えようぜ」

 にかっと笑っていう幸村に賛同し、全員部屋に戻っていった。

 ……そしてこれが、「秘宝、コン・ペイトー」をめぐる、悪の組織との戦いの序章であることを、私たちはまだ、知らずにいるのでした……。

(終わり)

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