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暑さと化け猫 [物語(伊達政宗)]

※初めに、注意事項をお読みください。

※この物語は、すべて作者の妄想でできております。

※この物語は、公式の物語と一切関係ありません。

※キャラの性格が、公式のイケメン戦国やあなたの妄想と違う場合があります。そういうのは受け付けないわ!という方は、このまま、回れ右をしてお帰りいただき、このブログのことを一切お忘れいただきますよう、お願いします。
 
 
 これは、ケイが来て間もなくの、暑い夏の日の話…。いつものように、織田軍の面々が集まり、軍議が行われようとしていた。…が、武将の一人である、政宗が来ていない…。

「……あいつ、また遅刻か…!」

 秀吉が深いため息とともに呟く、と同時に襖が開き、政宗の家臣が申し訳なさそうに頭を下げながら、用を伝える。

「失礼します。……大変申し訳ございません。政宗様が、暑気あたりと思われる症状で倒れられまして…その…今日の軍議は…」
「…! 本当か?! で、具合はどうなんだ?」
「はい、今は床に臥せっておりますが、大事には至っておりません…」
「そうか、わかった。ちゃんと療養するように、あいつに伝えてくれ。もう、下がっていいぞ」
「…ありがとうございます! 失礼します」

 秀吉の心遣いに、感謝と安堵の表情を浮かべ、家臣は深く頭を下げて広間を後にする。彼の姿が見えなくなると、ケイは三成の膝を叩いて聞いた。

「三成さん、しょきあたりって、なんですニャ?」
「暑気あたり、というのは、夏の暑さに体が耐え切れず、疲労がたまり、倒れてしまうこと、なのですよ」
「病気、ですニャ?」
「病気、というほどではないですが、食欲が無くなったり、やる気が出なかったりするので、厄介と言えば、厄介ですね」
「そうなんですニャ…?」
「そういえば…」
「光秀さん、どうかしましたニャ?」
「政宗の故郷は、ここよりかなり北の方にある。今の季節も、ここよりもずっと涼しいと言っていたのを思い出してな。ここ数日、『暑さで眠ることができない』とも…。もしかしたら、それが原因なのかもしれんな」
「どうしたら、政宗さんを治せますニャ?」
「体を冷やしてやることだな。氷があれば一番手っ取り早いんだが、あれは高価な上になかなか手に入らんしな…」
「氷…ですニャ…。…! 光秀さん、ありがとうございますニャ! 三成さん、僕、ちょっと政宗さんのところに行ってきますニャ」
「分かりました。くれぐれも、政宗様の負担にならないようにしてくださいね」
「?…あ、あぁ。……三成、俺は、何か礼を言われるようなことを言ったか?」
「……さぁ。ですが、光秀様の言葉の中に、ケイさんだけがわかる解決策があったのではないでしょうか?」

 政宗の御殿へと向かうケイを見送りながら、首を傾げる二人だった…。


                 ◇◆◇◆◇◆◇

 政宗は、額に当たるひんやりした感覚に違和感を覚え、ゆっくりと目を開ける。少しずつ意識を集中させて周りを見ると、心配そうに見つめるケイと、目が合った。

「政宗さん、大丈夫ですニャ?」
「…ケイ、か。悪いな、かっこ悪いとこ見せて」
「そんなことありませんニャ。病気ニャら、仕方ありませんニャ」
「病気…では、ないんだが…。…?…これは、氷、か? 駄目だろう…、こんな高価なものをこんなことに使うな」
「これ、氷にゃけど、溶けない氷だから、大丈夫ですニャ」
「溶けない…氷?」
「はいニャ、『万年氷塊』という、アイテムですニャ」
「まんねん、ひょうかい?」
「はいニャ。雪山に積もった万年雪が、すっごく長い時間をかけて結晶化して、石になったアイテムですニャ」
「へー……。食えるのか?」
「溶けにゃいので、食べることはできませんニャ。にぇも、食べるものとかを冷やすことは出来ますニャ」
「そうか、残念だ…」

 心底残念そうに呟くと、政宗はゆっくり目を閉じる。と同時に障子が開き、お盆を持った秀吉が入って来た。


「政宗、入るぞ」
「…もう、入ってるじゃねーか」
「大分、回復してるようだな。冷やし飴持ってきたから、飲んどけ」
「…おう、ありがとうな」
「家臣達にも配っておいた。ケイがくれた氷の石のおかげで、大量に作って早く冷やせたからな」
「確かに、この石は便利だな。秀吉、……世話かけてすまねぇな」
「気にするな。ちゃんと療養して、早く復帰しろ。…ケイ、あまり長居して、無理させないようにしろよ?」
「はいニャ、秀吉さん」

 秀吉は、軽くケイの頭を撫でながら部屋を出て行った。政宗は、もらった飴を飲み干すと横になり、そっと目を閉じた。

                  ◇◆◇◆◇◆◇

 翌日、公務に復帰した政宗に、ケイが小さな枕のようなものを手渡した。

「……これは、枕か?」
「はいニャ。普通の枕の中に、万年氷塊のかけらを入れてありますニャ。少しは寝苦しいのが解消できると思いますニャ」
「そうか、ありがとうな。だが、貴重な石だろう? ここじゃ手に入らないんだからな。あまり、無駄遣いするなよ」
「はいニャ。政宗さん」

 嬉しそうに微笑んで立ち去るケイを見送って、政宗は自分の御殿へと帰っていった。

                  ◇◆◇◆◇◆◇

 翌日の軍議。
 いつものように、政宗が来ていない…。大きなため息を吐く秀吉のもとに、一通の文が届けられた。

「……『ケイの枕で快眠し、寝坊し候。遅れる』…か…。だから、文を書く暇に来いと言っているんだー!」

 文を破りそうになりながら叫ぶ秀吉の怒号が、安土城の大広間に響き渡ったのであった……。

(終)

 本日のケイの日記

 政宗さんが、夜眠れないっていうから、万年氷塊の小さい欠片を入れた枕をあげた。
 ぐっすり眠れるようになったって言ってた。よかった。
(それで寝坊して、秀吉様の逆鱗に触れていましたけど、ね。 三成)
 
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