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夢現の闇(前編) [物語(徳川家康)]

注意

※最初に、「注意事項」をお読みください。
※この物語は、グロ表現があります。
※三成くんの設定が、公式ではあまり公表されていないため、史実を中心に組んであります。
※出演しているキャラの性格が、公式やあなたの中のイメージと違う場合があります。
※前編では、光秀さんを出し忘れました…。

……以上をよくご確認のうえ、納得できた方のみ、下記のリンクをお開きください。  
  
 真っ白い空間の中に、家康は一人で立っていた。いつからいるのか、どうしてここにいるのかもわからぬままに周りを見渡すものの、自分以外に人の気配はない。

(ここはどこだ…? 一体、どうなっているんだ…?)
 
 苛立ちを抑えながらゆっくりと足を進めると、自分を呼ぶ声が聞こえてきた。
 声の方向に慎重に足を進めていくと、人影が揺らいで見えた。が、相手の顔は逆光のせいなのか、よく見えない。
 幾度も繰り返し、自分の名を呼ぶ耳障りな声に、不快感をあらわにしながら、家康が言った。

「貴様、一体何者だ? なんで、俺をここに呼んだ」
『あなたが長らく抱えている苛立ちを、消して差し上げたのですよ。ほら…』
「………?」

 男が示す先を見ると、いつも見慣れたあいつが、顔を合わせるたび、その能天気な笑顔に苛立っていた三成の首があった。

『これでもう、あなたが苛立つことはないのですよ…』
「み…つな…り…! 三成ーーー!」

 男の下賤な高笑いが響く中、家康は三成の首を抱きしめながら、絶叫に近い悲鳴を上げた…。

                   ◇◇◇

「……………!!」

 自分の悲鳴に驚いて飛び起きる家康。ここが自分の部屋であることを確認し、汗ばむ額を拭いながら、大きくため息をつく。三日前から同じ夢に悩まされているのだが、あまりにも生々しい夢のせいか、抱きしめた三成の首の感触が手の中に残っている。

「…夢…か…。つうか、なんて夢だ…」
 
 自分に言い聞かせるようにつぶやき、身支度を整えると、何事もなかったように安土城へと向かった。

 城に着き、長い廊下を歩いていると、反対側から三成が歩いてきた。彼は、家康に気づくといつもの能天気な笑顔で挨拶をする。

「おはようございます、家康様。…? 顔色が優れないようですが、どうかしましたか?」
「…………」
「え…、家康様?」

 心配そうにのぞき込む三成の首筋に、無意識に触れる家康。その様子を見ていた政宗が慌てて駆け寄る。

「やめろ!家康、何やってんだ?!」
「……つながってる…。…え? あ、政宗さん」
「政宗様、おはようございます。…どうかなされましたか?」
「いや、家康がお前の首を絞めてるように見えてな。大丈夫か?」
「いえ、絞められてはいません。ただ、触っていただけで…。あ、家康様?」

 政宗の問いに答えず、ふらふらとその場を去る家康を見つめる二人。顔を見合わせ、呆れたように政宗が呟く。

「どうしたんだ?あいつは」
「わかりません…。ですが、どこかお体の加減が悪いのかもしれません。顔色も優れませんでしたし…」
「確かにな…。ま、後で聞いてみるから、お前は気にするな」
「わかりました。では、失礼します」

 政宗に促され、三成は軽く頭を下げてその場を後にした…。

                 ◇◇◇

 数刻が経って、政宗と茶猫が家康の部屋を訪れた。突然の訪問に戸惑いながらも、二人を招き入れる。用意が整い落ち着くと、怪訝そうな顔をして家康が話を切り出す。

「どうかしたんですか?急に来るなんて…」
「家康が、なんか元気がないって三成くんに聞いたから、政宗に遠乗り行く前に会いたいって、私が言ったの」
「…三成の奴。そういうのが大きなお世話だって言ってるのに…」
「そう言うな、家康。あいつなりに心配しているんだからな。で、なんか悩みでもあるのか?」
「そういう訳じゃ、ないです」
「ない訳ないだろう。今朝だって、見間違えたのは悪いが、三成の首に触っていただろう? あいつ、不思議がってたぞ?」
「それって、首を絞めているように見えたっていうあれよね。本当に、家康らしくないよ。何かあるのなら、ちゃんと話して」
「………」

 頑なに口を閉ざし、視線を逸らす家康を心配そうに覗き込む茶猫。政宗は、呆れたようにため息を吐いて言った。

「…分かった、これ以上は聞かないでやる。ただな、話したくなったらいつでも言え。俺でよければ、いつでも聞いてやる。よし、これで終わりだ。茶猫、行くぞ。遅くなっちまうからな」
「うん…。じゃ、またね、家康」
「あぁ…」

 家康は、気のない返事を返しながら二人を送り出した後、盛大にため息を吐きながらつぶやいた。

「…全く、ここの連中はどうして、こうもお節介な奴ばかりなんだ…」

                   ◇◇◇

 夕刻、家康が仕事を終えて、自分の御殿に戻ろうと歩いていると、後ろから血相を変えて走る三成とすれ違った。何事かと思い、そのあとを追いかける。やがて、町外れの大きな桜の木の下まで来て、ようやく彼が立ち止まった。

「三成!」
「……! …家康様? ……どう…して、…ここに…?」
「お前が…、血相…変えて…駆けていくから、…何事かと…思って…追いかけて…きたんだ。何があったんだ?」
「……実は…」

 三成は、手に握りしめていた投げ文を見せる。そこには、『茶猫姫を預かった。返して欲しければ、一人で町外れの桜まで来られたし』と、達筆な文字で書かれていた。それを見た家康は、大きなため息を吐いて言った。

「…茶猫なら、政宗さんと遠乗りに行ってるよ。あの人と一緒にいて、かどわかされることなんてある訳無いだろ。何を考えているんだ、お前は」
「え? そうだったのですか?! …知らなかったものでつい…」
「わかったんなら、帰るよ。秀吉さんが心配するから。その調子でいくと、誰にも言わないで飛び出して来たんだろ?」
「はい。早合点して…、申し訳ありませんでした。 ……!」
『……一人で来い、と言った筈なんだがな、佐吉…』

 不意に聞こえた耳障りな声に、さっと表情を変える三成。一陣の風が舞うと、そこには怪しげな仮面をつけた、中背の男が杖をついて立っていた。三成は、家康を庇うように立つと、男の名を低く呟く。

「……佐良…幻龍斎…」
「…? 三成、奴を知っているのか?」
「なに…。 ちょっと古い知人ですよ、のう、佐吉。 …いや、今は三成、じゃったかのう…」
「うるさい! お前と手を組む気はない、この間もそう言った筈だ。私の意思は変わらない」
「儂も言った筈じゃ…。お前の意思など関係ない。共に来い、とな」

 幻龍斎が杖を上げると、黒い衣装を身に纏った男が現れ、三成の鳩尾に拳をめり込ませる。声もなく崩れる彼の体を肩に担ぎ上げると、あっという間に連れ去った。

「……! 三成をどこに連れていく! …!」
「……貴方は、ここであったことを忘れるのです…。何もかも…」

 追いかけようとした家康の前に立ちはだかる幻龍斎。彼の仮面越しに光る眼に見つめられ、激しいめまいに襲われると、そのまま意識を失った…。

                    ◇◇◇

 一味の隠れ家にさらわれてきた三成。両脇を屈強な男達に押さえられ、身動きが取れずにいた。やがて、仮面を外した幻龍斎が現れて彼の前に立つと、拘束している男が髪を掴み、無理やり上を向かせる。彼は、三成の顔を撫でながら、目を細めて言った。

「相変わらず、綺麗な顔をしておるのう…、佐吉。いや、三成、じゃったな。どうじゃ?  気は変わったか?」
「……何度言われようと、貴様と手を組む気はない。信長様を殺して、貴様が天下を治めるなど…。許される筈がない!」
「そうか…、残念じゃのう。やはり、儂の考えがどれほど素晴らしいものなのか、もっと小さいうちによぉく教え込んでおくべきじゃったのう…。できれば、お前にはこの術を使いたくなかったのじゃが…。仕方あるまい…」

 そういうと、竹筒に入った液体を、無理やり三成の口に流し込む。抵抗しきれずに飲み込み、ひどく咳き込む、と同時に、頭の芯にもやがかかったようになり、意識が朦朧としてくる。自我を保とうとあがく三成の顔を、ゆっくりと幻龍斎が覗き込む。邪眼の力で、頭の中を火箸でかき回されるような感覚に、苦しみもがいて、必死に抵抗する。

「いい子だ、三成…。儂の目をよおく見るんじゃ…。そうだ…、いい子だ…」
「…あ……うぅ…やめろ………う……やだ………………っ!!」
「いい子だ…三成…。儂の可愛い傀儡(かいらい)よ…」
「……はい…幻龍斎様の…御心のままに…」

 抵抗もむなしく呪術に落ちた、三成の優しい紫の瞳が冷たい光を帯びると、両脇で拘束していた男達が離れる。幻龍斎は、満足そうな笑みを浮かべて、彼に言った。

「期が巡るまで、今まで通りに過ごせ。何か動きがあれば知らせよ。よいな」
「御意…」

 軽く頭を下げて敬意を示す三成。そのまま、暗闇の中に溶け込むように消えていった…。

                     ◇◇◇

 少し時間が遡る。桜の木の下で、幻龍斎の邪眼にあてられて意識を失っている家康を、茶猫が見つける。

「政宗! 家康が倒れてる!」
「なんだって? …なんであんなとこで…?」

 慌てて馬から降りて駆け寄る二人。家康に外傷などがないことを確認すると、政宗が背中をたたいて気を入れる。

「…っ…。あれ? 政宗さんに茶猫…。どうして、ここに?」
「それはこっちの台詞だ。なんでこんなところで伸びてんだよ、お前は」
「…え? ……なんで、俺、こんなところに…?」
「なんか変だぞ? お前。…本当に、何があったんだ?」
「……いや、大丈夫です…。すみません…」

 大きく頭を振ってから、ゆっくり立ち上がる家康を怪訝そうに見つめる政宗。茶猫も不安そうに見つめる。当の本人は、必死にここにいた理由を思い出そうとするが、頭の中にもやがかかったようになって思い出せない。ただ、なぜか三成のことが気にかかっていた。

「………ちょっと、秀吉さんの御殿に行って来ます…」
「待て、俺達もついて行くから。今のお前を一人にする方が心配だからな」
「大丈夫ですよ。そんな、子供じゃあるまいし…」
「子供よりも質が悪い。茶猫、家康と先に行ってろ。俺も馬を置いたらすぐに行く」
「わかった。行こう、家康」

 政宗が促すと、茶猫がそっと寄り添う。家康は少し迷惑そうにしながらも、秀吉の御殿へと歩き始めた。

                      ◇◇◇

 日が落ちてあたりが暗くなるころ、御殿の門のあたりで何やら苛立っている秀吉が、家臣に指示を出している。

「……まだ、戻らないのか、三成は…。とりあえず俺は、家康に話を聞きに行く。あと半刻しても戻らなきゃ、あいつを探しに行ってくれ。あとは…」
「秀吉さん、何があったの?」
「…うわ! …茶猫に家康、それに政宗も…。お前らこそって…。あ、家康、三成知らないか?」
「あいつに、何かあったんですか?」
「安土城から急に姿を消したんだ。ここに戻っているのかとも思ったんだがいなくてな。最後に見た奴の話じゃ、血相変えて飛び出していったあいつを家康が追いかけて行ったっていうから、何か知ってるかと思って、聞きに行こうとしていたんだ。ちょうどよかった」

 額を抑えつつ、矢継ぎ早に話す秀吉の肩をたたきながら、政宗が無言でなだめる。家康は、必死に頭を巡らすが、肝心のところが思い出せずに苛立ってくる。
 そうこうしているところに、三成が小さな提灯を下げて現れた。

「ただいま戻りました…。あ、皆様お揃いで、どうかしたのですか?」
「三成! お前、今までどこに行っていたんだ? 心配するだろう」
「秀吉様、申し訳ありません。寺にいたころの、その、古い知人が訪ねて来たので、街を案内して、宿まで送っていました。黙って出かけて、本当に申し訳ありません…」
「…門番が言うには、お前が血相変えて飛び出して行ったって聞いたぞ。何があった?」
「それは、何かの見間違いでしょう。本当に、何もありません。…疲れているので、そろそろ下がっても良いでしょうか?」
「あぁ…、悪かったな。でも、次からはちゃんと、何か言ってから出かけろよ」
「はい、では、これで失礼します…」

 秀吉の問いに、不思議そうに首をかしげて答える三成。話が済んで、自室に向かう彼の後姿を見つめていると、とすっと矢文が刺さった。
 制圧しきったばかりの九州地方に、信長の命を受けた光秀の使いで、一月ほどかけて各地の大名から血判をもらう仕事に行っているケイからのようだ。
 いつもなら、すぐにそれを手にする三成が、全く気づかずに部屋へと入っていったのを見て、四人は顔を見合わせる。少しして、口火を切るように政宗が呟いた。

「…どうしたっていうんだ?あいつは。いつもなら、真っ先に矢文に手を出すのによ」
「…三成くん、本当に疲れているんじゃないかな? なんか、様子も変だったし…」
「茶猫の言う通りかもしれないな…。あ、そういやお前等、なにしに来たんだ?」
「あぁ、家康が急にここに行くって言い出したからな。何の用だったんだ?」
「…いや、特に何でもないです…。あいつの顔見たら、なんか落ち着いたし…」
「…家康にしちゃ、珍しいな。ま、これを機に、少しずつ仲良くなってくれれば…」
「無理です」

 秀吉の言葉に、間髪入れずに返す家康を苦笑いで見つめる政宗。用が済むと、それぞれの御殿に戻っていった…。

                    ◇◇◇

 あれから一週間が経った。悪夢は、見始めたころから十日になり、家康の精神は限界を迎えつつあった。

(限界…かな…。不本意だけど…頼るしかない、か…)

 仕事が終わると、意を決して政宗の御殿を訪ねる。彼は、全く動じることもなく家康を迎え入れた。

「やっと、話すに気になったか?」
「…えぇ…。これ以上続くと、自分の頭がおかしくなりそうなんで…」
「なら、話してみろ。聞いてやるって言っただろう」
「実は…」

 家康は、自分が毎晩見続けている悪夢を、政宗に説明した。彼は、聞き終わると神妙な面持ちで口を開く。

「…そんな夢見てたんか…。そりゃ、首を確認したくもなる訳だ」
「えぇ…。一体、何が原因なのかもわからなくて…」
「まぁ…、俺としては、ちょっと安心したけどな」
「?」
「お前の『嫌い』ってやつが、『殺してやりたいほど憎い』っていうやつじゃなかったってことだ」
「……当たり前です。確かに嫌いですけど、顔さえ合わせなきゃいいって程度で、死んでしまえばいいなんて思ってませんから」
「そうか。…で、お前に話しかけている奴に心当たりとかないのか?」
「あれば、こんなに苦労してません」
「悪かった。…でも、よく話してくれたな。これで、その悪夢が正夢になることはない。俺の国では、『悪夢は誰かに話してしまえば、正夢にならない』って伝承があるからな」
「……そう、ですか…」

 困惑顔で答える家康の頭を優しく撫でながら言うと、彼はようやく安堵の表情を見せる。
 胸のつかえが下りた家康は、政宗に礼を述べて家路についた…。

                  ◇◇◇

 同じころの、安土城の茶猫の部屋。仕事を終えた茶猫がくつろいでいると、天井の板が外れて佐助が顔を出した。

「茶猫さん、ちょっといいかな?」
「佐助くん! うん、大丈夫だよ。何かあったの?」

 茶猫の許可が下りると、彼はひらりと舞い降りて、礼儀正しく正座する。出されたお茶を静かに飲みながら、話を切り出した。

「変なこと聞くんだけど…、三成さんに何か、変わった様子とかない?」
「三成くんに? …特に変わった様子はなかったけど…」
「そうか…。なら、いいんだけど…」
「三成くんが、どうかしたの?」
「もし、可能だったら…、彼の様子を見ていてほしいんだ。俺の方でも、注意するけど…」
「……事情は分からないけど、分かった。気をつけてみるね」
「うん、頼んだよ、茶猫さん。じゃ、俺はこれで失礼するね。また、何かあった時には来るから」

 それだけ言うと、彼は再び天井に入り、帰っていった。

                  ◇◇◇

 翌日、秀吉は信長の命を受けて、三成のところに来た。

「三成、信長様が明日、鷹狩りにi行くことになって、お前と茶猫に同行するようにと命が下った。急な話なんだが、大丈夫か?」
「鷹狩りに、ですか?…分かりました。楽しみですね、信長様と鷹狩りなんて」
「…?……あぁ、そうだな。あ、今回は、急に決まったことだから、俺と信長様、あと茶猫とお前だけだ。場所も近いから、何か起きることはないだろうと思うけど、それなりに準備はしておけよ」
「わかりました。…では、私は仕事に戻ります。失礼します…」

 軽く頭を下げて立ち去る三成を見つめていると、茶猫が話しかけてきた。

「秀吉さん、どうかしたの?にやにやして…」
「ん? あ、いや、ちょっと嬉しくなってな。あいつもようやく、一人前になってきたかな…って」
「三成くんが? どうして?」
「あいつ、動物にあまり興味がないせいか、鷹狩りもしないし、誘ってもあまりいい顔しなかったんだけど、さっき、『楽しみ』だって言ったんだ」
「そうなんだ…」
「あ、お前も一緒に行くんだぞ、明日の鷹狩り。ちゃんと準備しておけよ?」
「そうなの?! わかった。…じゃ、私も仕事に戻るね」
「おう、根詰めるなよ」
「はーい!」

 嬉しそうに立ち去る茶猫を、秀吉は微笑んで見送った。

                   ◇◇◇

 暗闇の中、三成は人目を避けるように隠れ家にやってきた。薄暗い部屋の中、黒尽くめの男達の奥に、幻龍斎が立っていた。三成は、彼の前に恭しく跪くと、口を開いた。

「幻龍斎様、明日、信長の鷹狩りに同行するよう、命を受けました。近場での狩りで、護衛もつけずに行くとのことです」
「ほう…、それは絶好の機会じゃ。…これを持って行け。そして、必ず奴を…信長を殺せ。よいな、三成。期待しておるぞ…」
「…御意」

 幻龍斎は、一丁の小型拳銃を差し出し、不気味な笑みを浮かべる。三成は、それを受け取ると懐にしまい、深く頭を下げると、再び闇の中に消えて行った…。

                   ◇◇◇

 鷹狩り当日、城下町からほど近い湖のほとりで、鷹狩りを始めた信長と秀吉。それを少し離れたところから、茶猫と三成が見ている。

「あ! 羽黒がウサギを捕まえたみたい! すごいね、三成くん」
「はい、さすが信長様です。的確にウサギを追い詰めておりましたから」
「そうだね。でも、秀吉さんの援護もあったからだよね」
「えぇ、阿吽の呼吸で、的確に指示を出していましたね…」

 嬉しそうにはしゃぐ茶猫の横で、冷静に分析している三成。そんな彼を、不思議そうに覗き込みながら言った。

「三成くんて、いっつも分析してるよね…。それって、楽しい?」
「楽しい…と言われましても、戦略を練るためには、敵味方関係なく、相手の弱点などを確実に調べて、把握しておかなければなりませんので、つい、…」
「…ごめん、そうだったね…」
「謝らないでください。私もこういう性分ですので、仕方がないのです」

 三成は、少し困った顔をしながら茶猫の頭を優しく撫でる。彼女もそれにこたえるように微笑んで見せた。それと同時くらいに、秀吉が二人に声をかけた。

「二人共ー、もう少し向こうに行くから、遅れずについて来いよ!」
「わかった! …私達も行こう、三成くん」
「はい…」

 先を行く秀吉たちを追うように、二人も歩き出した。
 やがて、新しい場所で秀吉達が再び狩りを始めると、三成はそっと傍を離れ、近くの茂みへと歩いて行く。不審に思った茶猫が、彼に気付かれないようにそっとついて行くと、三成は懐から拳銃を出し、信長に向けて構えた。

「…! 三成くん!駄目--------!!」

 茶猫が叫ぶのと同時に彼が引き金を引き、銃声が鳴り響いた。

(続く)


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