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時空を超えた猫 第五章 初めての料理 [物語(ネタバレなし)]

※初めに、注意事項をお読みください。

※この物語は、すべて作者の妄想でできております。

※この物語は、公式の物語と一切関係ありません。

※キャラの性格が、公式のイケメン戦国やあなたの妄想と違う場合があります。そういうのは受け付けないわ!という方は、このまま、回れ右をしてお帰りいただき、このブログのことを一切お忘れいただきますよう、お願いします。

以上のことがお守りいただける方のみ、この先にお進みください…。 
 
 最近、政宗が安土城の台所に立つと、小さな視線を感じることがある。その『主』を見ようとすると、目が合う前に逃げられ、正体がつかめない。

(大体、見当はついているんだが…。なんで、台所にいる時だけ、来ないんだ?)

 訝しげに思いながらも、穏やかに時は過ぎていくのであった…。

                     ◇◇◇

 ある、穏やかな夕暮れ時。ケイは、朝から部屋にこもっている三成と光秀の様子を見に来ていた。書物を読むのに夢中な二人は、何も飲まず食わずでいるようだ。

(いけない! このままじゃ、二人とも倒れちゃう! ……あ、そうだ! おにぎりでも作ってこよう。混ぜご飯にすれば、おかずもいらないし、本を読みながらでも食べられるよね)

 ぽん、と手を打って、ケイは台所へと駆けて行った…。

                     ◇◇◇

 台所に着くと、誰もいないことを確認してから、米を炊き始め、塩鮭を焼きながら、人参や椎茸、油揚げなどを細かく刻み、鍋で煮込み始める。焼きあがった鮭の味を見て、他の具材の味を調節する。

(この魚、ちょっとしょっぱいからこっちは薄味にして…。あ、ちょっと辛い方が、眠気覚ましになるかな。えーと、唐辛子はどれだろう…。…? この実、なんだろう? 見たことがないなあ…)

 『山椒』と書かれた壺を見つけ、中の実を一つ、手に取って眺める。おもむろに口の中に入れてかじった瞬間、口の中に火が付いた。

「〇△+◇※%$#&…!!!!!!」
「……!? ケイ! 大丈夫か?!」

 この世のものとは思えぬ悲鳴を、近くを通りかかった政宗が聞きつけ、台所に飛び込んできた。床を転がっていたケイは、彼の姿を見るやいなや、並んでいる水瓶の隙間に頭を突っ込んで隠れる。

「……なんだよ、ケイ。……? お前、山椒かじったのか?」
「………ごめんなさいニャ…」
「おい、怒ってないから、こっちに来いって」
「………食べないでニャ…僕は、食べられませんニャ…」

 水瓶の間から引っ張り出すと、ケイは、頭を抱えてふるえている。政宗は、彼女に水を飲ませた後、優しく抱え上げて話しかける。

「お前のこと、食ったりしねーよ。普通の猫なら、ちょっと興味あるけどな」
「…普通の猫なら、食べるのですニャ…」
「あ、いや。…それに、お前は三成の恩人だ。そんな大事な相手を食えるか」
「…本当に、食べないですニャ?」
「あぁ、食ったりしない。…つか、誰だ? そんなこと言った奴は。…見当はついてるが…」
「光秀さん、ですニャ。政宗さんは、人以外は何でも食材に見えるから、食われないように気を付けろって、言ってましたニャ」
「それで、台所にいる時は近付かなかったのか…。で、何を作ろうとしていたんだ?」
「混ぜご飯のおにぎりですニャ。三成さんと光秀さんが、朝から何も食べずに部屋にこもってるから、書物を見ながらでも食べられるようにと思いましたニャ」
「…あいつら…。夢中になるのは構わねぇが、飯はちゃんと食えって言っているのに…。これが具か?…お、いい味だ。ちょっと、葉物が欲しいな。そこに、大根の葉を漬けたのがある。細かく刻んで混ぜるといい。鮭が塩辛いから、少しでいいぞ。あと、山椒はすごく辛いから、ほんの少しでいい。粉になってるのがあるはずだから、それを使え」
「…このくらい、ですニャ?」
「あぁ。あとは、これを混ぜて…、握れば…。よし、できたな」
「ありがとうございましたニャ! 三成さん達、喜んでくれるかニャ」
「おう、上出来だ。さて、持っていくか」

 嬉しそうに頷くケイと共に、おにぎりをのせた盆をもって、三成の部屋を目指す二人だった…。

                   ◇◇◇

 部屋に着くと、いつものように、秀吉の怒鳴り声が聞こえてきた。

「光秀に三成! お前等、書物を読むのは構わないが、飯は食ったのか?!」
「ん?……そういや、食ってないな」
「すっかり、忘れていました…」
「全く…。今、なんか持ってくるから待ってろ!……わっ! 政宗! ケイも」
「おう、食うもん、持ってきてやったぞ、秀吉」

 襖を開けたところで、政宗とぶつかりそうになる秀吉。その足元で、ケイがおにぎりをのせた盆を掲げていた。

「…びっくりした…。お、うまそうだな、それ」
「はいニャ。おにぎり、作ってきましたニャ。どうぞですニャ」
「ありがとな。今、茶を入れるから、部屋に入って待ってろ。ほら、お前等はその辺を片付けろ!」

 秀吉が部屋に戻ると同時に、家康が通りがかった。それに気が付いた政宗が、彼に声をかける。

「…家康。どうかしたか?」
「あ…。ちょっと、小腹が空いたんで、何か貰いに行こうと…」
「なら、ちょうどいい。お前も食ってけ。ケイの手料理だ」
「ケイが? …料理ができるなんて、すごい特技だね」
「はいニャ! これでも、料理長にまでなったことがありますニャ」
「料理長…に? なんかよくわからないけど、すごいんだね…」
「僕達は、旦那さんの狩りのお手伝いをするのが、仕事でしたニャ」

 家康は、自慢げに胸を張って話すケイを微笑ましく見つめながら部屋に入り、秀吉が入れてきたお茶を飲みながら、おにぎりを頬張る。ケイは、政宗の膝にちょこんと座っておにぎりを食べながら、皆の反応を見ていた。

「ん、うまい。塩加減もちょうどいい。具材も、出汁が効いてていい感じだ」
「…美味しい。…俺には、もう少し辛くてもいいかも」
「お前は、辛いものとりすぎだ。気を付けろよ」
「秀吉さんも、しょっぱいものを取りすぎないようにしてくださいね」

 秀吉の小言に反論する家康。その横で、おにぎりを見つめて固まる三成。申し訳なさそうに微笑んで、ケイに言った。

「…あの、ケイさん、お願いがあるのですが……、次からは、に…」
「…ケイ、次に作るときは、人参をめいいっぱい、増量してやれ。それこそ、飯と同量でもいいぞ」
「…?」
「ま、政宗様!」
「三成、お前はいい加減、人参嫌いを克服しろ。子供じゃないんだからな」
「秀吉様まで…」

 秀吉に睨まれ、しぶしぶとおにぎりを食べる三成。それを見ていたケイが、首を傾げながら言った。

「三成さんも、人参が嫌いなのですニャ? そんなとこまで似ているなんて、本当に、縁がないのかと疑いますニャ」
「三成も、ってことは、ミヤビも人参が苦手だったのか?」
「……ミヤビ?」
「そうですニャ。もう、大好物のハンバーグの中に、こまっかくして入れても、すべて取り除いて食べるくらい、大っ嫌いでしたニャ」
「はんばーぐって…あ、前に言ってたな、つくねみたいなやつ、だっけか。あれの中からほじくり出すとは、それもすごいな…?」
「秀吉、『ミヤビ』って、何者だ?」

 不意に出た名前に反応して、政宗が訪ねる。するとケイが、ポーチから例の写真立てを取り出して、説明を始めた。

「僕の命の恩人で、唯一お仕えした旦那ですニャ。もう、死んじゃいましたけど…」
「………!」
「政宗、言っとくが、三成には、生き別れの双子の兄弟も、こいつがケイのいた世界に行っていたこともないからな」
「…そうか…。しかし、他人の空似、とは思えねぇな…」
「どれ…。ほう、これは驚いた…。もしも、ケイと一緒に来ていたなら、三成の影武者になれただろうに…」
「光秀さん、こんなのが二人もいたら、たまったもんじゃないんですけど」
「そうか? 俺は、楽しそうだと思うがな」

 クスッと、本当に楽しそうに笑う光秀に、心底嫌そうな顔をする家康。それを見た政宗が、思い出したように言った。

「あ、光秀! ケイに変なこと吹き込むの、やめろよな」
「変なこと?」
「俺は、こいつを食う気はねえよ! 全く、しょうもないこと吹き込みやがって…。三成! 心配しなくても、本当に食ったりしねぇ! 泣きそうな顔をすんな」

 不安そうに見つめる三成を政宗が宥める横で、秀吉が低い声で光秀に言った。

「……光秀」
「なんだ? 秀吉」
「例え、冗談だったとしても、二度とケイにそういうことを言うな」
「…どうしてだ?」
「ケイは、自分の家族も大切な主人も、もんすたーっていうのに食われて失っているんだ。彼女自身も、食われそうになった時の恐怖がまだ、心の傷になっている…。だから、二度と言うな。分かったな」
「……!」

 秀吉の言葉に、その場が静まり返る。光秀は、大きくため息を吐いてからケイを見つめ、謝罪の言葉を口にした。

「……知らなかったとはいえ、すまなかったな、ケイ。以後、気を付ける。許してほしい」
「いいえ、大丈夫ですニャ。あの世界は、弱肉強食だから、僕達みたいに力の無いものは、大きなモンスターに食べられても文句言えませんニャ。だから、ハンターさんのお手伝いして守ってもらうか、集団で行動するか、どちらかなんですニャ」
「成程な…。どこの世界も、大変なんだな」

 ふっと微笑んで光秀が言うと、不思議そうな顔をして秀吉が言った。

「…お前が素直に謝るなんて、明日、嵐でも来るんじゃないか?」
「失礼なことを言うな。俺はいつでも素直なんだが?」
「どこがだ? 胡散臭いその笑みをやめて、いい加減、本音で腹の中を晒せ」
「悪いが、こういう性分でな。今更、変えられんし、変える気もない」

 くすくすと笑いながら、秀吉をからかう光秀。二人をはらはらとしながら見つめる三成と、呆れた顔で見つめる政宗に、無関心でおにぎりを頬張る家康。五人を見つめながら、ケイがぽつりと言った。

「……皆さん、仲がいいんですニャね」
「まぁな。…そうだ、ケイ。この世界の料理に興味があるんなら、いつでも教えてやるぞ」
「本当ですニャ?! 政宗さん」
「あぁ。お前、俺が台所にいる時、よく覗いていただろ? 入り口、とか、天井裏から、とか」
「はいニャ。いい匂いがしていたから、すごく気になって。でも、近付くのが怖かったから、どうやって作るのか、こっそり見てましたニャ」
「素直でよろし。筋もよさそうだから、じっくりと教えてやるよ。まずは、基本からだな」
「はいニャ! よろしくお願いしますニャ」

 嬉しそうに頷くケイの頭を優しく撫でながら、政宗も微笑む。


 ……こうして、安土の長閑な一日が過ぎて行くのであった…。

 (第六章に続く)
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